生前贈与を活用する
生前贈与とは、文字通り生前のうちに遺産となるべき財産を相続人らに贈与することです。相続税対策として最もポピュラーな方法です。
①子など推定相続人に連年贈与をする
年間110万円以下であれば贈与税はかからないので、できるだけ多くの推定相続人に毎年110万円ずつ贈与する。早く始めれば始めるほど効果が得られる方法です。
ただし、贈与後3年以内に相続があった場合には、その贈与財産の額は相続税の課税対象となります。
また、基礎控除内の贈与を続けるよりも、贈与税を払ってでも贈与した方が有利になる場合もあります。それぞれのケースで試算してみることをお勧めします。
②配偶者に居住用財産を贈与する
婚姻期間20年以上の配偶者に居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を贈与した場合、課税価格から2000万円を控除する特例があります。基礎控除の110万円と合わせると、2110万円まで贈与税はかかりません。
不動産の移転には登記の際の諸費用(登録免許税、不動産取得税、司法書士への手数料など)がかかることにも注意が必要です。
③孫に生前贈与する
子どもを飛び越して孫に贈与すると、相続財産を減らせると同時に、課税を一回減らすことができます。つまり2回の相続税はかからず、1回の贈与税がかかるということです。
しかし、贈与の額によっては結果的に多くの税金を納める場合もあります。どちらが有利になるかは専門家に相談した方がいいでしょう。
④子や孫に住宅取得資金を贈与する
父母や祖父母が20歳以上の子や孫に住宅取得資金を贈与した場合は一定の金額が非課税となります。
住宅取得資金とは、住宅用家屋の新築や取得、増改築等に充てる資金を言い、住宅そのものの贈与や住宅ローンの返済資金などには充てられません。
この制度が適用されるのは平成27年1月1日から令和3年12月31日までの限定措置(税制改正により延長の可能性があるので、適用期限は税務署にご確認ください)
住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結日、家屋の種類ごとに非課税限度額も変わります。
⑤子や孫に教育資金を贈与する
平成25年4月1日から令和3年3月31日までの限定措置(税制改正により延長の可能性があるので、適用期限は税務署にご確認ください)
父母や祖父母が子や孫への教育資金に充てるための1500万円までの贈与は非課税となります。
信託銀行などの取扱金融機関経由で税務署に「教育資金非課税申告書」を提出する必要があります。
教育資金とは、学校等に対して直接支払われる金銭(入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費等)の他、学校以外の塾、習い事などの費用も対象になります。
ただし、学校以外の教育資金の場合は、非課税額が500万円までです。この特例による教育資金管理契約は受贈者が30歳に達した日において終了します。
⑥子や孫に結婚・子育て資金を贈与する
平成27年4月1日から令和3年3月31日までの限定措置(税制改正により延長の可能性があるので、適用期限は税務署にご確認ください)
父母や祖父母が子や孫への結婚資金に充てるための贈与する場合300万円、子育て資金に充てるために贈与する場合は1000万円までが非課税となります。信託銀行などの取扱金融機関経由で税務署に「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出する必要があります。
結婚に際して支払う金銭(挙式費用、結婚披露費用、家賃・敷金等の新居費用、転居費用)妊娠、出産及び育児に要する金銭(不妊治療・妊婦健診に要する費用、分べん費等・産後ケアに要する費用、子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む))等です。この特例は20歳以上50歳未満の成人が対象となります。
生命保険を活用する
生命保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があるため、同じ額の現金を残すより節税となります。
相続対策にもっとも適しているのは一生涯死亡保障が続き、被保険者の死亡時に必ず保険金が支払われる「終身保険」です。適用を受けるためには、契約者と被保険者が同一で受取人を相続人とする契約形態にしなければなりません。
不動産で対策する
相続税を計算する基となる課税財産は、被相続人から相続したすべての財産を金銭で評価し、これを合計して求めます。現金であれば、その金額がそのまま評価額となりますが、不動産の場合は「時価」で評価します。
「時価」にはいろいろな解釈がありますが、土地の場合「路線価」または「倍率方式」となります。
これは国税庁によって1年に一度発表されるもので、適正価格(公示価格等)よりもあらかじめ20%ほど低い価格に設定されています。
つまり、現金を土地に換えるだけで約20%の財産の評価額を減らすことができます。
建物の「固定資産税評価額」は各市町村役場や都税事務所が評価していますが、これは建築価格の50%程度に設定されています。このように相続税額を減少させる効果は絶大です。
しかし、不動産を新たに購入するには仲介手数料、不動産取得税等の税金、登記手続き費用などがかかり、建物の保有には固定資産税もかかるので注意が必要です。