Q. 孫に生前贈与をしたいと思いますが、気を付けることはありますか?
A. 孫の贈与でよくやってしまう間違いが2つあります。
孫に贈与の事実を知らせない
贈与したのに自分がお金を管理している
贈与は贈与契約という形の契約です。
契約にはお互いの合意が必要である以上、お孫さんが若くても「亡くなるまで財産を隠しておく」ことはできません。それをやってしまうと贈与契約が無効となってしまいます。おそらく法定相続人がもらうことになるでしょう。
例えば、孫の名義で通帳を作っていたとしても孫への贈与は無効になります。お孫さんと財産の贈与に合意したうえで、証拠として契約書を残すのが賢明です。
また、お孫さんと合意をしてもお孫さん自身が財産を管理できない状態ならば贈与したと認められず、本人の財産として相続が行われます。「もしかしたら無駄遣いするかも」と思うなら生前贈与そのものを後に伸ばした方が良いです。
孫に生前贈与を行う際には、以下の点にもご注意ください。
必要な老後資金は確保しておく
老後資金が不足しないように必要な老後資金を計算して、念のために多めに残しておきましょう。
孫のことを思って多額の生前贈与を行い、老後資金が不足することがあります。そのようなことになると、かえって孫に迷惑をかけることになりかねません。
相続開始前3年以内に行われた贈与は相続税に加算される
相続開始前3年以内に行われた贈与は、相続税の計算に足し戻され、相続税の課税対象となる相続や遺贈により財産を取得した人に対して相続税が課されることになっています。
孫が代襲相続人の場合、孫に遺贈する場合、孫と養子縁組をしている場合、孫を生命保険の受取人にしている場合等は、このルールの適用を受け、相続税が課されることになります。しかも、代襲相続人の場合を除いては、相続税額の2割加算の適用も同時に受けることになります。
連年贈与とみなされないために
「贈与を受けた金額が110万円の基礎控除額以下なら贈与税の申告が不要」という制度を活用し、例えば毎年110万円ずつ20年にわたって贈与するとします。
すると、20年間で110万円×20年=2,200万円贈与したことと同じになります。1年単位では、基礎控除額110万円以下なので無税と考えますが、こうした方法は最初から2,200万円の贈与をする意図があったものとみなされ、2,200万円全額に課税されてしまうことがあります。これを連年贈与といいます。
連年贈与とみなされないためには、以下のような工夫が必要です。
・受贈者本人の預金口座に振り込み、証拠を残す
・ときには110万円を超える贈与をし、贈与税申告をする等の記録を残す
・毎年違う時期に、違う金額で贈与を行う等、単発の贈与であることを強調する
孫の生活費や教育費はが必要な範囲内なら課税対象外
生活費は非課税であり贈与税がかかりません。
意外と知られていないのですが、孫の生活費や教育費が必要な範囲であれば、そもそも贈与税の対象とはなりません。
例えば、東京で大学に通うためにひとり暮らしをしている孫に、祖父母が仕送りをしたり、家賃や学費を支払うために贈与をしたりしても、それは、そもそも贈与税の対象とならず、1年に110万円という基礎控除の範囲にも含まれません。
ただ、「通常の日常生活を営むのに必要な費用」に限られるので、過度に高額の贈与は、生活費や教育費とは認められませんし、例えば4年間分の生活費をまとめて贈与したりするのも認められません。
また、贈与された側が、生活費に使わずに貯金したり、株式等生活に必要ではないものの購入に充てたりした場合も、生活費とは認められず贈与税の対象となるので注意が必要です。