令和4年分所得税の確定申告のシーズンがやってきた。
その中で医療費控除を受ける人は多いと思うが、この医療費控除について誤解をしている人をよく見かけるので、今日はこれについての話をしたいと思う。
『医療費控除の対象となる医療費は、治療を目的とした医療行為に支払った費用及びそれに付随する医薬品、医療器具の購入代金、介護保険の対象となる介護費用等から保険金等で補填される金額を控除した金額』と、ざっくり言うとこんなところか。
その中で、摘要可のものと不可のものの区別などの情報は、インターネットで豊富に得ることが出来るので、ほとんどの人は概ね間違えずに記載すると思われる。
ただ、誤解の多い項目として、次の3点が散見される。
1点目の誤解
(誤)同一生計親族で扶養されている人の支払った医療費は、本人の医療費控除の対象となる。
(正)同一生計親族の支払った医療費は、本人の医療費控除の対象となる。
その親族が所得があろうがなかろうが、また本人よりも所得が多いか少ないかは問わない。
2点目の誤解
(誤)その親族が5月に医療費を支払ったが、8月に嫁いで家を出ていったので適用がない。
(正)医療費を支払った時点で同一生計であれば適用となる。
他の人的控除(扶養控除、基礎控除、障害者控除等)のように年末時点での現況で判定されるものと違い、あくまで支払った時点での現況で判定する。
3点目の誤解
(誤)支払った医療費から10万円を控除した金額が対象となる。(つまり10万円の足切り額)
(正)支払った医療費からその年分の総所得金額等×100分の5(10万円を限度とする) を控除した金額(200万円が限度)が対象となる。(ただしこれは、セルフメディケーション税制以外の従来からの医療費控除)
例えば、
(イ)年金収入が250万円の65歳以上の人は、140万円が所得金額
(ロ)パート収入が250万円の人なら167万円が所得金額
(ハ)また、自営業者で年間600万円の売上で必要経費が450万円の人の所得金額は150万円というように総所得金額等が「所得の種類」によって異なってくるので、それぞれについて足切り額を計算すると、
(イ)70,000円
(ロ)83,500円
(ハ)75,000円
多くの人が10万円だと思い込んでいるのは、サラリーマンを対象としているからだと思われる。
(総所得金額等が200万円ということは、年収が約298万円)
所得税の規定の多くは、収入金額でなく所得金額を基準にしているので、「今年は10万円に達してないから領収書は捨ててしまった」という前に十分各自の所得金額を確認してほしい。